そもそも、遺言が必要ですか?


世の中には終活やエンディングノートといった言葉が溢れ、さも”遺言は残すべき”といった風潮が見られます。
しかし、本当に遺言が必要でしょうか? 誰もが遺言を残さなければならないわけではありません。遺言ではなく”家族信託”などの方が有用な場合もあります。
遺言を残すべきか、そんな相談もお気軽にお寄せください。

遺言を残した方がいいケース

たとえば相続人が配偶者と子供のみで、不動産はなく財産が預貯金のみであれば、遺言を残す必要性は低いでしょう。ただ、以下のような場合にはいわゆる“争族”を防ぐためにも、遺言の作成を検討されることをお勧めします。

財産が不動産のみ
「うちには財産なんて大してないから」遺言の必要がないというのは、大間違いです。裁判所の司法統計によると、財産額が1000万円以下の場合が3割程度、5000万円以下が4~5割程度を占めています。逆に多額の財産を有する場合は生前に相続対策を行なっていると言えるでしょう。
そして、この財産の多くを占めるのが不動産です。不動産のやっかいなところは、簡単に分割できないという点です。これこそがもめる要素になっているようです。

離婚歴がある
もはや離婚が珍しくなくなってきている昨今の日本ですが、これも相続のトラブルにつながりやすい要素と言えます。離婚後再婚すれば、元の配偶者に相続権はありません。
しかし、子供がいた場合は相続権が発生します。前の配偶者の子供と、今の配偶者の子供。お互いが仲良く交流している…などという例は少ないでしょうし、いざ相続という事態になって初めて会うということも多いでしょう。そのときに仲良く遺産分割について話し合えるのか…。

子供がいない
初婚年齢の上昇とともに、出生率の低下が大きな社会問題となっていますが、様々な事情で子供がいない夫婦も増えてきています。そのような夫婦の一方が亡くなった場合、相続人となるのは①親などの直系血族、②兄弟姉妹となります。
特に兄弟姉妹が相続人となった場合、その関係性にもよりますが、普段交流が希薄なことも多いためにもめごとが発生しやすいようです。なお、この場合に遺言で指定すれば、兄弟姉妹には遺留分が認められないために配偶者に財産をすべて残すことも可能です。

事実婚状態だ
結婚という制度に縛られない生き方を選択する人も増えていますが、いわゆる事実婚は相続において意味をなしません。いくら実質的に妻であり、夫であっても相続人とはならないわけです。
もし内縁関係の方に財産を残したいのであれば、遺言を残すことが必要と言えます。

身寄りがない
配偶者はもちろん、親兄弟や相続人となる方がいない場合は、最終的に財産が国有化されます。ただし、生前に身の回りを世話をしていたり、特に親しい関係だった人は特別に相続人となれる可能性があります。つまり、特定の方に財産を残したい場合は、やはり遺言を残す必要があります。

その他こんな場合も
・財産の中に宝飾品や骨董品、絵画など、評価が困難なものが多く含まれている。
・相続対象の家に一部の相続人が長く住んでいる。
・相続人の中に行方不明者、連絡が付きにくい人がいる。
・認知症や精神障害などを患う人が相続人に含まれている。
・相続人に未成年者がいる。

遺言の基礎

遺言の種類

緊急事態にのみ行うことができるものを除くと、主に以下の3つとなります。

①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言

自筆証書遺言

遺言を残す方が自筆で全文、作成した日付を記載し、署名・捺印する遺言書。
手軽で、コストパフォーマンス抜群です。
人によっては、こちらをお勧めする場合もあります。

メリット
・費用が安い。公証人に支払う手数料がかからない。
・気軽に作り直し、書換えができる。

デメリット
・相続人がなくなった後、家庭裁判所において検認手続きを経る必要がある。
・遺言書が紛失、または発見されない可能性がある。
・発見された場合でも、相続人等によって隠されたり、偽造されたりする恐れがある。
・公証人や法律の専門家が関与しないため、遺言書の法的な要件を満たさず、遺言の内容が実現できない可能性がある。

公正証書遺言

文案のみ考えて、公証役場にて公証人に作成してもらう遺言。
そのぶんの費用はかかるものの、遺言の内容を確実に実現できるという点において、安心感はあります。

メリット
・公証人が作成するため、法的な不備は生じない。
・作成後、遺言書の原本は公証役場で保管。つまり、紛失や隠匿、偽造のされる恐れがない。
・自筆証書遺言のように、家庭裁判所での検認手続きが不要。

デメリット
・公証人に支払う手数料がかかる。
・証人(相続人は不可)が2名必要。

秘密証書遺言

字のごとく、内容を秘密にしておきたい場合に有効な遺言。公正証書遺言と同じく、証人が立ち会う中で公証人が関与する。ただし、関与するのは封印に限られるので、内容が法的に有効ではなかったり、紛失の恐れがあるのは自筆証書遺言と同じ。

自筆証書遺言書の書き方

自筆証書遺言の場合、前述したように
・全文を自筆で書く
・作成した日付(年月日)を入れる
・署名押印する
ということが必要です。詳しい書き方は、自筆証書遺言の書き方をご覧ください。

鉛筆ではダメと民法に規定されているわけではありませんが、消すことができると後々になって改ざんされるおそれがあるため、遺言書の効力自体を疑われかねません。ボールペンや万年筆を使用することをお勧めします。
日付に関しては、「平成〇年△月吉日」という書き方ではなく、きちんと年月日が特定できるようにしなければなりません。
署名はもちろん自筆で、押印は実印でなくとも構いません。ただし、これも必須ではありませんが、実印で押印して印鑑証明書を添付すれば、それだけご本人の遺言であるという信憑性は増します。

なお、遺言書に記載して法的に効力が発生する事項は限定されています。
詳しくはこちの法定遺言事項をご確認ください。

本当にこの書き方でいいのか…不安でしたら、当事務所の遺言書添削サービスをお気軽にご利用ください。

遺言書作成メニュー

遺言書お任せコース

文案からお任せいただくサービスです。文案が出来上がりましたら、それをご本人に清書していただきます。公正証書遺言の場合は、さらに公証役場にて作成するという流れになります。
なお、公正証書遺言の場合は、作成日当日に公証役場へ一緒に出向くことになります。お身体の調子が悪い等で難しい場合は、別途日当を支払って公証人に出張を依頼することになります。

遺言書作成支援コース

文案はご自身でお考えいただき、遺言の体裁や内容について不備がないか、アドバイスいたします。
ご用意いただく書類は、上記と同様です。
添削サービスについては、こちらをご覧ください。

遺言書作成のご依頼にあたって事前にご用意いただきたい書類など

・遺言をされる方の印鑑証明書1通(3カ月以内)
・遺言をされる方の戸籍謄本と改製原戸籍謄本 各1通
・遺産を受ける方の戸籍謄本1通(遺言をされる方の戸籍と同じ戸籍に入っている場合は不要)
・遺言される財産の中に不動産があるのであれば、その不動産の権利証(登記済証または登記識別情報通知)
・遺言される財産の中に不動産があるのであれば、その不動産(家、土地、マンション)に関する、固定資産税・都市計画税 課税明細書
・遺言される財産の中に預貯金があるのであれば、預金通帳
・自動車など、そのほか遺言される財産があれば、それらの内容が分かる証明書等

※上記以外の書類のご用意をお願いする場合もございます。