自筆証書遺言を作成する要件
1、全文を自筆で作成すること
パソコンなどで作成したものは無効、もちろん他の人に代筆を頼んだものも無効とされます。
2、日付を記載すること
必ず、遺言書を作成した年月日を記載してください。「〇年△月吉日」は日付があいまいなので無効です。「〇年△月末日」は日付が特定できるので有効となりますが、「〇年△月◇日」としっかりと年月日を書くのがベストです。
3、遺言者による署名押印
遺言者本人が自筆で氏名を書くことも要件のひとつです。ペンネームや通称などでもOKとされていますが、本名を書いておいた方が無難です。これに加えて押印も必要です。使用する印鑑は認印や、拇印でも構わないとされていますが、後々のトラブルを防止するためには実印で押印して、印鑑証明書も添付しておくのが間違いのない方法と言えます。
4、財産内容などは明確に書くこと
不動産の場合は、登記簿謄本に記載されているとおり(記載例参照)に記載。預金の場合は、支店名や口座番号などまで記載すれば間違いありません。単に「自宅」と記載したら、複数ある不動産のうちどれなのか不明確となり、争いになる可能性があります。
5、遺言は必ず1名で作成すること
夫婦が一緒にひとつの遺言を作成しても、有効な遺言とはなりません。共同遺言は認められないので、必ずひとりで作成してください。
6、契印をすること
これは必須ではありませんが、遺言書が2枚以上にわたるばあいには、契印をしておいたほうが無難です。後々の偽造や変造を防止するとともに、遺言の信頼性も増します。
7、訂正方法に気を付けること
契約書などで訂正や加除を行う場合は、間違えた個所に二重線を引いてその上に訂正印を押したり、訂正を行って欄外に押印して「〇字削除 △字加入」と記載する方法がありますが、遺言書では訂正方法が異なります。訂正方法は以下となります。
①加入の場合は{ のしるしを付けて正しい文言を記載、削除や訂正の場合は原文が判読できるように二本線で消し、正しい文言を記載する。
②変更した箇所に押印する。
③欄外などに変更した旨を付記して、署名する。具体的には「本行〇字加入△字削除」、「本遺言書第〇条第△行目『◇◇◇◇◇』を『□□□□□』と訂正した」などと記載する。
※上記は技術的な問題で単線で取り消していますが、実際の記載では二重線で行ってください
遺言者山田花子は、次のとおり遺言をする。
第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記の不動産を、夫山田太郎(昭和20年2月2日生)に相続させる。
記
(1)所在 埼玉県所沢市所沢二丁目
地番 2番2
地目 宅地
地積 100.25平方メートル
(2)所在 埼玉県所沢市二丁目2番地2
家屋番号 2番2
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 45.25平方メートル
2階 45.25平方メートル
(3)上記家屋内の家財・家具・現金その他一切の財産
第2条 遺言者は、G銀行に対する遺言者名義の下記貯金債権を長女A子(昭和53年3月3日生)に相続させる。
記
(1)通常預金
支店 所沢南
口座番号 123456
(2)定期預金
支店 所沢南
口座番号 654321
第3条 遺言者は、前2条記載の財産を除く遺言者の有する不動産、預貯金、現金その他一切の財産を、長男W男(昭和58年1月1日生)に相続させる。
第4条 遺言者は、この遺言の執行者として、次の者を指定する。
住 所 埼玉県所沢市美原町五丁目2026番地の8
職 業 司法書士
遺言執行者 古川裕(昭和53年12月19日生)
付言 この遺言で、ほとんどの預金をA子に相続させることにしたのは、長年にわたって私の介護をしてくれたためであり、その感謝をあらわしたいためです。私は、愛する夫やW男、A子たちと共に人生を送ることができて本当に幸せでした。これからも家族がお互いに助け合い、仲良く幸せに暮らしていくことを願っています。
平成〇〇年△月◇
住 所 埼玉県所沢市所沢二丁目2番2号
遺言者 山田花子 印