限定承認とは
- 通常の相続(単純承認):プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ
- 相続放棄:プラスの財産もマイナスの財産も引き継がない
これに対して、限定承認は両者の中間に位置する手続きと言えます。つまり…
限定承認=プラスの財産はすべて引き継ぎ、マイナスの財産はプラスの財産分だけ引き継ぐわけです。
財産状況がはっきり把握できていれば相続、または相続放棄をすれば問題ないのですが、そもそも財産状況が不明という場合は、有効な手段となり得ます。
ただし、実際に限定承認がされるケースは少ないのが現状です。
その理由は、以下のメリットとデメリットを読んでいただければ分かるでしょう。
限定承認をするメリット
1、相続財産の状況が不明
これは前述したとおりです。
財産状況が把握できていれば、たとえマイナスの財産があっても、プラスの財産がそれを上回るのであれば相続(単純承認)してしまい、マイナスの財産を清算したほうがお得で手間もかかりません。それができない、または後日になってプラスまたはマイナスの財産が発生する可能性がある場合には、限定承認をするべきとなるでしょう。
2、自宅等を確保できる
家業を継ぐなどの理由があり、自宅だけはなんとしてでも承継したいという場合、限定承認をすれば「先買い権」の行使が可能となります。家庭裁判所が選任する鑑定人の算出価額を支払うことによって、自宅など特定の相続財産だけを守り抜くことができるわけです。
3、返済の義務を最低限果たせる
相続放棄をすれば、債務からすべて解放されます。しかし、まったく借金を返さないのは…と義理を重んじるのであれば、限定承認は有効と言えます。
4、新たな相続人が発生しない
相続放棄をした場合には、次順位の相続人に権利義務が引き継がれます。次順位相続人も相続放棄をすれば、さらにその次順位へ…と引き継がれることになりますので、身内に迷惑をかけることにもなります。限定承認をすれば次順位の相続人に権利義務が承継されることはありません。
限定承認をするデメリット
1、相続人全員で行う必要がある
もし相続人の中に限定承認を承諾しない方がいらっしゃる場合、限定承認はできません。相続人全員の足並みがそろって、初めてできる手続きだからです。
また、限定承認を行う前に相続人のうちひとりでも財産についての処分行為(売却や賃貸など)を行ったら、限定承認はできなくなってしまいます。
2、清算手続きなどが煩雑
相続放棄のように、申述すればOKというほどものではありません。財産目録を作成するひつようがあるのはもちろん、相続財産の換価手続き、それに伴う弁済などをする必要があります。そのため、司法書士などの専門家へ依頼する際の報酬も高額となる傾向があります。
3、税金が発生する場合がある
相続税以外に、みなし資産譲渡所得税という税金が発生します。限定承認をした場合、相続を開始時の時価で資産が譲渡されたものとされ、その資産の価格上昇益が課税対象とされています。
もし結果的にプラスの財産がマイナスの財産を上回っていた場合、相続(単純承認)していた場合はこの譲渡所得税を支払う必要はないため、それと比較すると損をすることになります。