1.2次相続時の1次相続の登録免許税を免除
① 個人が土地を相続する場合に適用(租税特別措置法第84条の2の3第1項)
 日本全国で、九州の面積にも及ぶ土地の所有者が不明と言われています。これはそもそも、相続登記が確実に行われていないためです。そこで、相続登記を推進するため、登記時にかかる登録免許税を軽減する時限措置(2021年3月31日まで)が実施されています。


 そのひとつが、土地の2次相続において、1次相続の登録免許税を免除する(下は法務省HP掲載のイメージ)というもの。「じゃあ半額になっておトク」と思われるかもしれませんが、登記実務上はこの規定を使わなくても、2次相続の場合は基本的に下のイメージ図のAからCへ移転登記することが可能です。もちろんAからB、そしてBからCへ移転登記を行うこともできますが、通常は1度の登記でAからCへ移転登記を行いますので、この免税措置の恩恵を受けることはありません。

② 活用できるシチュエーション
 ではまったく意味のない免税措置なのかというと、そんなことはありません。活用できそうなのは、以下の場合です。
◆共有が生じる場合:1次相続が何らかの理由で共有になってしまうのであれば、直接AからCへ移転登記できません(たとえば、Xが2分の1、Yが2分の1の持分を得る場合)。その場合にはこの免税措置の恩恵を受けることになります。
◆2次相続前に売買した場合:この免税措置は、上記のケースでいうCさんがその土地を相続している必要はなく、Bさんが死亡前に第三者のDさんに売却していたとしても適用されます。売却時に不動産会社が関与していればAからBへの相続登記を省略することはないでしょうが、個人間で売却していた場合にはあり得る話です。

2.少額土地相続時の登録免許税を免除
① 10万円以下の土地相続時に適用(租税特別措置法第84条の2の3第2項)
 もうひとつ、免税措置が適用される規定が設けられています。適用の条件は3つ。
1)市街化区域外の土地であること
2)法務大臣が指定する土地であること
3)不動産の価額が10万円以下であること
 市街化区域かどうかは市区町村役場で調べられますし、不動産の価額は固定資産税評価証明書に記載されています。問題は法務大臣が指定する土地かどうかですが、これは各法務局のホームページなどに対象地が公表され、確認できるようになっています。埼玉県内でも、比較的人口が多いさいたま市や川越市、所沢市内でも多くの場所が対象地として指定されています。

② 活用できるシチュエーション
 上記の条件すべてに当てはまるのは、基本的に都市部ではない場所の土地ということが多いはずです。1筆や2筆程度であれば、不動産の価額が10万円以下の場合の移転登記時にかかる登録免許税は1000円となり、あまり恩恵はありません。
 恩恵を受けそうなのは、広大な農地や山を丸ごと相続した場合など。相続した土地が何十、何百筆にもなっていて、それぞれの価額が10万円以下の場合もあり得ると思います。

 なお、この免税措置は、登記申請すれば自動的に適用されるわけではありません。申請書に適用条文を記載する必要がありますので、ご注意ください。